hajime_A

旭ハジメ · @hajime_A

17th Aug 2015 from TwitLonger

盗作盗用パクリと、なぜ僕が困るかについて冷静になった頭で説明してみました。


盗作、盗用が騒がれていますが、同時にパクリも攻撃されています。著作権の基本と、なぜ法律に基づいて怒ってもらわないと困るか説明したいと思います。

盗作盗用は程度によって違法ですが、パクリは合法です。著作権法で表現は保護されるけど、アイデアは保護されないからです。でも、今怒っている人のほとんどはそれが合法か違法か気にしていません。著作権法が今のような状態になっているのにはいくつか理由があります。



・アイデアを保護しない理由。
ひとつのアイデアからいくつもの表現が生まれます。例えばりんごと金魚と壺を組み合わせた絵を描くというアイデアがあったとします、誰がどう描くかで似ているけど違う絵になります。アイデアに著作権を認めてしまうと、誰かが一度りんごと金魚と壺の絵を描けば、今後著作権が切れるまで同じアイデアの絵を描いてはいけないということになってしまいます。

アイデアを盗むことがパクるということです、これは完全に合法です。盗作、盗用は人の表現を盗むことです。構図や形、筆致などをトレスしたり、見て写したり、時にはそのまま画像加工して使用したり、あるいはそのまま勝手に利用することで、程度によって違法となります。

この表現というのは自主性のある素晴らしい作品という意味ではなくて、法律上の言い回しでいいものも悪いものも、表現一般を指します。



・線引の難しさ
著作権を語る際、線引がとても難しいです。どこからどこまでが表現で、どこからがアイデアなのか。またオリジナリティがないと著作権は認められないため、その表現が普遍的でなくオリジナルなものかどうかなども判断されます。著作権で保護されないものは他にも色々あります。例えば建物の著作権は認められていません。認めてしまうと町中で写真を撮る際に写った全ての建物の著作権者の許可が必要になり、自由な表現が阻害されすぎるからです。

基本的には著作者保護のため著作権を認めたいのですが、全てに著作権を認めてかつ必ず許可とらないといけない場合、表現活動があまりにも阻害されます。たとえば飲酒運転の際ある程度以上のアルコールが呼気に含まれていれば違法で、アルコール入りのお菓子を少し食べただけでは飲酒運転にならないのと似ています。



・なぜ法律に基づいて怒ってもらわないと困るのか
僕はイラストレーターで絵を描いています。トレスはしていません。めんどくさいし誰にでもできるしある一定のクオリティを超えないからです。資料は使います。資料を使う際、特にそれが素材として使用許可されているかどうかは気にしません。構図を変えたり細部を変えて資料として参考にするだけなら合法だとわかっているからです。
 
ファンアートで好きなものを描くこともあります。好きな漫画のキャラクターやゲームの絵を描いたりしています。これらは著作権者がいます。好きなものを描いたいい絵なので見てもらいたいと思ってHPに掲載しています。著作権法はこのような状況をゆるく認めています。親告罪なので、著作権者の害になって訴訟を起こされたり、文句を言われるまではグレーだけどOKということです。著作権者がおそらく認めるであろう、誰にも迷惑のかからない表現なら、HPやTwitterで無料で公開することは個人利用とは言えないけれど、たぶん大丈夫じゃないかなというかなりゆるいグレーです。

これらの判断は全て法律に基づいています。法律でグレーから黒のものが決まっていて、どの辺りなら法律的に大丈夫か、その法律は親告罪なので著作権者が怒らないような、あるいはアイデアなどを参考にしたことが一見しても、あるいはアイデア元を並べてもわからないかどうか考えながら資料を使います。

でも、今怒っている人のうちほとんどは、法律なんか気にしていません、それが盗作盗用か、あるいはパクリなのかも気にしていません。もちろんなぜ怒っているのかは分かります。佐野さんを養護したいわけではありません。

でも、現在出ている情報だけで判断すれば最初のオリンピックロゴは法律的にOKでした。裁判になってもおそらく無罪でしょう。だから悪意を持った誰かがこいつの過去をほじくってやろうと考えました。過去の仕事を全て漁って盗作、盗用を探してくるだけでなく、彼の人間性や縁故採用など探してきて、こいつは悪者なんだから、みんなで祭りあげて社会的に抹殺してやろうとしています。

彼らは法律は気にしません。裁判所は3審制で弁護士がつき、推定無罪の原則が適用されるなど人が人を裁くことに関してとても慎重です。また、法律には量刑が定められています。軽い犯罪なら軽い罰、重い犯罪なら重い罰が課されます。でもインターネットではみんな同じ罰です。レイプも殺人も窃盗も未成年飲酒喫煙も、盗作盗用パクリも。パクリは合法なのにネットでは殺人と同じ罰を課されます。まとめサイトが作られ、過去の悪行は全て暴かれ、すこしでもその人が悪人に見えそうな情報だけが集められて全て公開されます。名前を検索すればすぐに出てきます。一生消えないレッテルをはられることになります。

STAP細胞の時は自殺者が出ました。でも、嘘の研究成果を発表することって、あんなに攻撃されないといけないようなすごく重い罪ですか?状況証拠だけで不倫の疑いまでかけられて、あることないこと書かれていました。今回の盗作騒動もどこまで追い詰めれば満足するんでしょうか。佐野さんが自殺するところまで追い込めば満足するんでしょうか。著作権法違反って、そんなに重い罪じゃないです。罰金と損害賠償があっても、実刑にすらならないような微罪です。

あなたが被害者に同情したり感情移入して、この人を助けたいと思っている時、どうしても歯止めが効かなくなります。こいつは悪人なんだから何をしてもいい。そう思ってしまいます。どうか慎重になってください。

・なぜ僕が困るのか。
すでに書いたように、僕は作品制作の際資料を使います。著作権は定義が難しく、どこからどこまでが違法かがはっきりしない法律なので、僕が合法だと思って、安心して利用できる範囲で資料を利用します。自動車を運転している時、自分は免許を持っていて交通法を知っているから、自分のしていることが合法だと知った上で安心して運転しているようなものです。

でも、今の風潮がどんどんエスカレートしてしまったらどうなるでしょうか。著作権の切れた昔のものは法律上OKです。だから神話を下敷きにした物語が大量に作られたり、名前に著作権はないので神話の名前を使ったりする作品たくさんありますよね。でも、それらは法律でOKというだけなんです。法律でどこからどこまでが著作権で保護されるか決まっているから、著作権で保護されないものは勝手に使っていいということになっているんです。でもネット上の誰かが、こいつのしていることは気に入らないと思って、それだけで攻撃することが許されちゃったら、何を元にして自分のやっていることがOKだと判断すればいいのでしょうか。

資料を使うのも、アイデアを盗むのも、法律でOKでも関係ない、お前は悪いことをしているんだと言ってネットで炎上しちゃったらどうしたらいんでしょうか。ネットには時効はありません。今はOKで炎上していないようなことでも、10年後に今より厳しくなっちゃったら、今僕がネットに公開しているようなファンアートが攻撃されるかもしれません。ネットには時効がないので、たとえHPやPixivから削除しても、誰かがどこかに転載されたものを探し出してくるかもしれません。過去に1度ネットで無料公開したことがあるだけで叩かれたらどうすればいいんでしょう。

僕は今とても怖いです。今OKとされているアイデアをパクることも、資料を使うことまで、過去にさかのぼって裁かれる未来が来るのが怖いです。

もちろん実際には炎上はガソリンがある限り燃え続ける祭りで、今後はっきりと悪いことをし続けなければおそらく大丈夫でしょう。でも100%じゃありません。ある日突然理不尽な理由で炎上して、消化に失敗したら僕のキャリアはおしまいです。ただでさえ不安定で稼ぎは悪く夢しかないような仕事なのに、不安を抱えたまま仕事を続けなければいけません。

怖くて怖くて、イライラをTwitterでぶちまけてしまいました。挑発するような口調だったので不快に感じた人も多かったと思います。特に絵が好きでフォローしてくれている人たちに申し訳なかったです。すみませんでした。



旭ハジメ

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