福島)子どもの甲状腺調査、「過剰診断」と批判
朝日デジタル2014年6月11日

 東京電力福島第一原発事故の放射線被曝(ひばく)による、子どもの甲状腺への影響を調べる検査のあり方を議論する県の部会で、過剰診断・治療の可能性や、いまの枠組みでは被曝の影響かどうか判断できないなど、専門家から批判が相次いだ。県は、被曝影響の解明の仕方については今後、検討するという。

 甲状腺がんは全般的に進行がゆっくりで、患者の生存率も高く、必ずしも早期診断早期治療で生存率が高まるわけではない。世界的に必要以上にがんを見つけて治療する「過剰診断・治療」が問題となっている。

 しかし県は、チェルノブイリ原発事故後に子どもの甲状腺がんが多発した教訓から、事故当時18歳以下の子どもを対象に甲状腺検査を実施。これまでに50人が、がんと診断された。

 この日の県部会で渋谷健司東京大教授(公衆衛生)は、「(すでに50人ががんと診断された)状況をみると、福島も過剰診断の可能性がある」と指摘。その上で「県民に過剰診断の可能性を周知したり、治療方針を考え直したりした方がいいのではないか」とした。

 これに対し、検査を実施する鈴木真一県立医大教授(甲状腺外科)は、「学会の指針などの基準に基づいて治療しており、必要ない手術はしていない」と反論。ただし、がんの進行具合など手術の必要性の判断に必要なデータは、いずれ学術論文で発表するまで公表できないとした。

 専門家の部会は、論文発表前に、データの県民への公表を求めていく。

 一方、専門家からは、がんと被曝との因果関係の解明に必要な甲状腺被曝線量が不明な点についても批判が出た。県立医大では今後、線量の比較的高い浜通りと低い会津地方の比較を実施するなど検査のあり方を検討するとした。(大岩ゆり)

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