vertigonote

vertigo · @vertigonote

12th Feb 2014 from TwitLonger

長くなりすぎたのでこちらで「新世界」のこと呟くね。
大いにネタバレします!


ああいう上下と血縁の関係性が強固なものであればあるほどジャソンの置かれる状況での心の削られ方の生々しさが増しているのは間違いなくてですね。
ジャソンが課長につかみかかったとき「すっかりヤクザだな」って言われるのって本来なら年長者にたてつけない社会構造ありき(逆にヤクザ側は若い連中が序列を無視してNo.3と4(実質2と3)で構成がひっくり返ってる)。「出世したな」って言われまくるのも「既存の社会の中では俺らより上にくることはありえないお前が」ってことじゃないですか。
このへん、たぶん他の国には出てこないニュアンスなのかなって思っています。詳しくないのですが。

で、断れない状態で逃げられない場所に放り込まれて、あげく「何も変わってない」を告げられ続ける彼の飼われる生活の屈託って尋常じゃない。

でもあそこまでジャソンがいったのはその「反逆性の低さ」「適応能力の高さ」だったと思うんですね。で、それは彼にはそこまで「自己」が獲得できなかった背景があると思うんです。というか獲得してたら生きていけなかったんじゃないか。

で、チョン・チョン兄貴との最後の会話が最後のトリガーになった理由は、おそらく生き抜く道がこれしかない、という以上に彼のアイデンティティの獲得だったと思うんですよね。「こっち側につけよ」じゃなく「このあたりで選べよ」/「俺はお前を許すと思うか?」じゃなく「お前は俺を許せるか?」で。あんな状態でも「選べ」って言ってくれるんだよ。そりゃジャソンも泣くよ。

そしてあの台詞(強くなれ)が中国語で発せられたこと。「お前、俺らの側じゃなかったかもしれないが、あいつらの側じゃそもそもないだろ?少なくとも「俺がいる」側の人間だろ?って。ここで華僑という「もうひとつの血」に紐付けられるのはそれはそれで地獄かもしれないのだけれど、彼にとってあれほど救われる言葉はなかったと思うんですよ。所属先は、組織じゃないところにだってあったじゃないか。俺には生きてる限り兄貴と同じ出自という血があるじゃないか。その切実な思いが苦しい。
いきなり上から退路絶たれてあの道に追いやられて彷徨ってた彼はチョンチョンのツレになって初めて誰かと対等になれたんじゃないか。

ジャソンが劇中、たった一度の紫煙をくゆらすとき蘇るあの日の記憶。たった一度の「ああ、初めて俺は生きてることを感じられた」の晴れ晴れとした笑顔にそんなことを思ったのです。あのラストシークエンスが素晴らしいの、それまでずっとクールに開閉音を響かせていたライターの音はそこにはなく、火がつかない100円ライターの音なんですね。なんて遠くにきてしまったんだろう、という大河浪漫の素晴らしいアイコンになっていました。

また思い出したら何か追加するかも。

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