もしあなたが、本当のことを知りたいと思ったら、すべてのことを一度は疑ってみること。これは、たしかに正しい。あなたは、今まで抱いていた間違った考えから、まず自由になることができるだろう。

そして、論理的に考え判断する能力も大切なことである。ものごとの見かけの姿の奥に隠れた真実や、この宇宙を支配している法則を知るための、不可欠の道具である。

しかし、あなた自身の生き方に関すること、人とのかかわりに関すること、この複雑な社会に関することについては、「論理的な」方法だけに頼ろうとすると、かえって事の真相をとらえられなくなってしまう場合もある。

これら複雑なことを理解し、また新しいことを発見し新たな学問を創り出してゆくには、いったいどんな能力と方法が必要だろうか。

そのためには、次のことを思い出してみるとよいだろう。ある人のほんとうの気持ちを察するのに、その人のまなざしだけで十分だいうような場面を。また、人間や社会に関することはあまりに複雑で、見せかけと包み隠し、嘘とだましに満ちている。しかも、状況というものはつねに一回限りのものであり、今ここで判断し行動しなければ意味がないというような場面が多いということを。

次のような力を身につけること。心の微妙な動きを察知できる感受性を。全体的な状況をいっきに把握する直感力を。必要に応じて何でも出てくる底無し沼のような記憶力を。未来を構想し計画を立案するための想像力を。自分の心や他の人を行動へ駆りたてる豊かなことばの力を。そして不確実なことに自分を賭けてゆける決断力と行動力を。


ジャンバッティスタ・ヴィーコ

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