とかくマスターベーションと化す、ローカル線の活性化運動。


【はじめに】
いすみ鉄道の鳥塚社長が地域活性化運動は「とかくマスターベーション」と痛烈に批判されていますが同感です。
http://isumi.rail.shop-pro.jp/?day=20120810
イベントをする、特産品を作る・・・これらは果たして活性化でしょうか?
鍋と包丁を買っても、おいしい料理は出てきません。
問題は鍋や包丁をどうやって使って料理をするかです。。
しかし、活性化運動をしている人は、良い鍋、良い包丁を買うことに躍起になり、鍋と包丁を買ったら満足してしまって、あとは勝手に料理が出てくると思い込んでいます。
つまり、イベントをやるというだけでは活性化せず、問題はそれらをどう活用するのかが問題です。
ですが、こういった活性化運動はどうでしょうか、イベントをすることに躍起になり、どうやって多くの人に知ってもらい、多くの人に興味を持ってもらうかを丸で考えてい
ません。
もちろん、多少は考えているでしょうが、全く訴求には程遠いレベルです。

【メイドトレインは何故、活性化に繋がるのか】
ある鉄道オフの幹事が「メイドトレインなんて活性化にならない」と毒づいています。
こういった発想をする方は典型的な、鍋と包丁準備すれば料理が出てくると信じてやまない方の発想です。
たしかにメイドトレインを運行したからといって、その後乗客が殺到するなんてことはありません。
それをもって「活性化にならない」と言っているのなら、まさに鍋と包丁準備したのに料理が出てこないと騒いでいるのと同じことです。
ではなぜメイドトレインは活性化になると言えるのでしょうか?
それは巨大な報道効果です。
多くの人に知ってもらう、最も有効な手段はマスコミを使うことです。
CMや広告掲載などを打てば小さな広告でも数十万円からテレビCMなどは数億円という莫大な費用がかかります。
赤字を抱えているローカル線には不可能なことです。
それが、記事やニュースとして報道されれば、広告展開するより大きなPRが可能で、しかもタダです。
今までメイドトレインは日テレやTBS、フジテレビのニュース、情報7Daysニュースキャスター、ガイアの夜明けなどで取り上げられました。
その他にも新聞、雑誌、ネットニュースでも報じられ、海外では例えば中国では新華社通信が配信、中国国内で最低でも50媒体以上に取り上げられました。
これをCMに換算すれば、ざっと数億円程度の宣伝費を投じるのと同じ宣伝効果があります。

しかし、「メイドトレインなんて利用者の特性にマッチにしない」「利用者のニーズを汲んでいない」という人がいます。
では、スマホなど「移動通信」に求められる利用者のニーズは何でしょうか?
「通話品質」「料金」「速度」etc、しかしソフトバンクのCMは「通話品質」「料金」「速度」をどう訴えかけているのでしょうか?
「ELTの皆さん、これからLTEとして活動してください」・・・わけが分かりません。
白い犬のお父さん・・・「通話品質」「料金」「速度」と何がどう繋がるのでしょうか?
あるいは「缶コーヒー」に求める消費者のニーズは何でしょうか?
「おいしさ」「味わい」などでしょうか。
では缶コーヒーのBOSSのCMは「おいしさ」「味わい」の一体何を伝えているのでしょうか?
消費者へのメッセージは「ろくでもないすばらしい世界へ」と、わけが分かりません。
ハリウッドスターまで使って、数十億、数百億という金を使って、消費者のニーズとはおよそ結びつかないCMを放送する意味は何でしょうか?
それは、この手のわけのわからないCMは確実に消費者の記憶に鮮明に残り、話題になるということです。
消費者は物を選ぶときに、記憶のない方を選ぶということを先ずしません。
様々なメーカーの様々なコーヒーがある中で、(毎回必ずこれを飲むと決めている人は別として)記憶にある物から選択します。
そういった購買心理を基づき、こういったCMは作られているわけです。
メイドトレインが活性化の一約を担えるのは、こういったCMの法則性と合致しているからです。

一方、ローカル線のニーズはどうでしょうか?
「安全」「快適」「地域社会に貢献」etc、こんなところでしょうか。
しかし、活性化を行う人の多くは広告や宣伝の素人です。
こういった宣伝のいろはも知らない人たちがCMを作るとこんなCMが出来上がります。
「私たち○○鉄道は、皆様の健康と安全を見守り、地域の発展に貢献いたします」
よく地方CMでありがちなパターンです。
でも、こういうCMをみて「○○鉄道凄くね?地域の発展に貢献するんだってよ!!」・・・なんて会話誰もしないですよね。
つまり、そんなCMをやっても誰も見向きもしません。
たしかにCMやらないよりはやっている方がまだ良いのですが費用対効果は薄いプロモーションです。
にもかかわらず、それをあえてやりたがるのは何故なんでしょうか?
自らは常に話題にしないような宣伝を自らはやる・・・
そこに何の意味があるのでしょうか?
これつまり、全く何も考えていない証拠なんです。
それで自分たちは一生懸命やっている気になってしまう・・・
まさにマスターベーションです。

【活性化できない運動の判定方法】
最近気づきましたが、こういったいかに多くの人に知ってもらうかを考えているかいないかはインターネットの使い方を見るとよく分かります。
まず、FaceBookだけで案内ページを作っている所は、「ホスタビリティーは皆無」と言って良いでしょう。
もはや最悪です。
そもそもなぜFaceBookなのでしょうか?
「ブームだから」?
ではブームってどれくらいブーム?
調べてみるとFaceBookは日本では人口の1割程度にしか普及していません。
逆に言うと9割は利用していないということです。
ではその使っていない9割の人がFaceBookの情報ページを見ようとすると何が起きるでしょうか?
「お前の個人情報教えろ」という登録画面が出てきます。
例えば量販店で掃除機を買おうと、店員に聞いたら「お名前、フルネームでおっしっゃてください。あとメールアドレスと生年月日も」と言われたら、「なんだこの店?」と
思うんじゃないでしょうか?
でも、それをやっているんですよ、9割の方に対して。
これじゃーせっかく興味をもってくれた方に関所を設けてバンバン追い返しているだけです。
そのどこが一人でも多くの人に知ってもらう活性化なんでしょうか?
こうやって言うと「おかしい」事に気づくはずです。
では何故そんなことやったのでしょうか?
要するに、お客様の立場など全く考えずにやっていたというわけです。
お客様の環境は様々です。
FaceBookが無い人がアクセスしても問題ないか、もっと言えばPCならどうか、PCもIEならどうか、Firefoxならどうか、スマホならどうか、携帯ならどうか・・・
この程度の検証は最低限しておいて当然だと考えます。
全員が満足するのは無理としても、大方が満足できるものは作れます。
しかし、9割の方が見れないものを作るというのはまったく何も考えていない証拠です。
と、書くと某掲示板あたりで「閉じるがあるのを知らないのか」と言い出しそうですが、いきなり「個人情報教えろ」なんて表示したら「何だこいつ」と、ブラウザーごと閉じられるのがオチです。

ブログを情報発信で使っているのも最悪です。
そもそもブログは固定的な情報を発信するためのものではありません。
ブログは日記を書くシステムです。
その日記で不特定多数に固定的な情報を発信するということ自体が既に無茶苦茶です。
ここでもホスタビリティーを全く考えていないわけです。
ブログはどういう表示システムでしょうか?
記事を書きます。
翌日新しい記事を書くと、昨日書いた記事は下に掲載されます。
そしてまた翌日記事を書くと、最初の記事はさらに下に表示されます。
それを繰り返すと(システムによりますが)最初の記事は数ページ先に表示されます。
こうなってしまうと、ブログにアクセスするとどこに肝心のイベント情報があるのかさっぱり分かりません。
そうならないためには、記事を更新しないことです。
しかしそんな放置状態のブログを誰が見るのでしょうか?
そもそもブログが何かを全く考えずに使っている証拠です。
それに、ブログ記事はSEO対策もしにくいですし、デザインの自由度も限定的です。
そもそも運営会社が広告掲載をして収益を上げているわけですから、バンバン広告が出ます。
お客様に自分たちで開催するイベントの訴求をしたいときに、他の商品バンバン訴求してどうするのでしょうか?
何も考えていないわけです。
ブログというのは確かに手軽に掲載できるという理由で使っている人も多いでしょう。
ですが、手軽にできるものを情報発信したらお客様には「こいつら手軽にやっているな」と思われてしまいます。
そりゃそうです、手軽にやっているんですから、全く図星です。
そんな適当感いっぱいのイベントに誰が金払って行きたいと思うでしょうか?
たとえそんな人が10人しかいないとしても、いまどき独自ドメイン取得してサーバーレンタルなんて年間1000円もあれば出来る時代です。
1000円でそんなネガティブに思う人がいなくなるなら、払っておいた方がいいでしょう。

【会社なら倒産している活性化運動】
例えば新製品の自動車を作って販売することを考えましょう。
まず、どんな製品を作るのでしょうか?
どんな製品を作るかというのなら、まずどんな製品が求められるかを考えなくてはなりません。
つまりマーケティングです。
マーケティングリサーチをベースに、仮に「ファミリーをターゲットにしたハイブリッドカー」を作るという骨格ができました。
では、実際に製品にする設計開発がをしなくてはなりません。
同時に概観や内装は工業デザイナーがデザインします。
それを基に設計図を作ります。
設計図通りに作るために、今度は工場に生産ラインを作らなくてはなりません。
流れ作業の生産ライン、ある工程は1分、ある工程は5分では流れが止まってしまいますから、各工程ごとの時間管理(タクトタイム)も必要です。
当然資材も、計画通り入ってこなくてはならず、ネジ一つ無くても全工程が止まります。
これらは生産管理です。
しかし、どんどん製品ができても売れなければ仕方ありません。
それを売るためには販売店や営業マンが必用です。
でも、消費者が知らない製品をセールスしてもなかなか売れません。
そこで宣伝が必要です。
これが広報です。
宣伝も、テレビ、雑誌、新聞、CM、街中の巨大看板etc様々な媒体があり、それをを作る専門家がいます。
CMにはCMプランナーや演出家、雑誌などの広告にはグラフィックデザイナーなど。
CMのかいあって、バンバン契約が取れても、工場から製品が届かないと仕方ありません。
製品をどうやって輸送するのか、物流部門の仕事です。
ここでも、バンバン生産しても物流が追いつかないと在庫であふれてしまいますし、逆に手厚い物流を準備しても生産が追いつかないと準備した物流が無駄になるので生産と
の連携も必要です。
お客様に納車しても、何か不具合があるかもしれません。
そういったお客様の声を吸い上げ、何か致命的な欠陥があるのならリコールも必用です。
これが品質管理です。
もしリコールが出たのなら、車をお預かりして修理するアフターサービスも必要です。
お客様からの問い合わせや苦情に応対するカスタマーセンターも必要です。
かなり大雑把に書いただけでもこれだけ膨大な「ミッション」を経て、「車が売れる」のです。
このどこか一つのコマ、ネジ一本が届かなかったというだけでも、全ての流れが止まります。
(実際にはリスク管理していますから、あちこちにバッファーはありますが)
しかし、活性化運動はどうでしょうか?
常に何かが欠落しています。
イベントをやるのは結構ですが、多くの人に知ってもらわないと意味がありません。
ではどうやって宣伝するのでしょうか?
「駅や車内にポスターを貼ります!」
でも、多くの人にそのローカル線のことを知ってもらおうという時に、その車内に貼っては外部の人に全く情報発信していません。
結果、沿線の人からは「イベントやっているなんて知らなかった」と言われる有様です。

「USTREAMで情報発信!」
では、その番組をやっていることを多くの人はどうやって知るのでしょうか?
地上波じゃあるまい、黙っていても数万人が見ているわけではありません。
長野電鉄屋代線の存続運動もUSTREAMで情報発信していましたが、番組を作ることに躍起になり、見てもらう事をまるで考えていませんでした。
結果、何が起きたでしょう?
USTREAMは視聴人数が表示されますが、その数、実に二十数名。
これでは40億円の累積赤字を抱える屋代線の存続に関心がある人たちは全国で二十数名しかいないとわざわざ宣伝しただけです。
まさに、鍋と包丁準備すれば料理が出てくると信じ込んで活動した結果です。
こんなことなら何もしない方がまだましです。

「ツィッターで情報発信!」
でもフォロワーさんいないといくらツイートし続けても、意味ないです。
フォロワーさんが20名で内輪ばかり・・・全く外部に情報発信していません。
某掲示板で「リツイートがあるのか知らないのか」と書かれていましたが、1万人フォロワーさーんがいる内の1%がリツイートすれば、100人がリツイートします。
その100人が平均300人のフォロワーさんがいれば、この段階で4万人に情報がばら撒かれます。
一方、20名のうち1%がリツイートしても、計算上は一人にも至りません。
切り上げて一人として、その人に300人フォロワーさんがいても合計320人にしか情報がばら撒かれていません。
つまり、ツィッターを使うのならフォロワーさんを増やすことが重要です。
ツィッターでツイートすれば後は拡散して勝手に世界中に広まる・・・たしかにそんな祭りはたまにありますが、宝くじに当たるような妄想を抱いているようでは活性化でき
ません。

「ホームページを作ります!」
ホームページを作れば後は勝手に多くの人が見にくるわけではありません。
訴求あるページのデザインやキャッチコピーとともに、検索でヒットするようにするSEO対策もいまどきは必須。
こちらも、ホームページを作れば後は勝手に大勢人がくるわけではありません。
秋田内陸縦貫鉄道ではトレインオーナーという制度を募集し、除雪費用の一部に当てたいそうですが、ホームページで告知しても殆ど問い合わせも無いそうです。
と、言う報道を見てホームページを見てきましたが・・・そんな情報ありません。
探しまくるとかなり下層にあるのですが、そんな捜さないと分からない情報なんて伝わるわけがありません。
まして、報道されたということは事前に取材を受けているわけです。
ならば、新聞に掲載される→多くの人がホームページに訪れるわけですから、ホームページのトップに「トレインオーナー募集」と掲載しておくべきです。
それであれば興味を持ってくれた人にストレートに誘導できます。
もちろんこれもただ載せるのではなく、お客様が「協力したい」と思う、写真やキャッチコピー、デザインが必要です。
しかし秋田内陸縦貫鉄道に限らず、多くの活性化運動はそういったことを丸で考えていません。
「なんかインターネットにあげればあとは世界中から来るんだろう」という様な乱暴な発想です。
結果、せっかく新聞報道で多くの人が知るきっかけが出来たのに、知ってくれた人に的確に情報を伝える手段が何も確保されていません。
そりゃー伝わるわけがありません。

「パンフレットを作ります!」
こちらも作ればいいというものではありません。
魅力的な写真、魅力的なデザイン、魅力的な文章の案内、こういうものがそろってお客様が行ってみたいと思うものです。
しかし、こういった活性化団体や行政の作るパンフレットは殆どの場合、ただの電話帳です。
ただ店名と電話番号、住所が並んでいるだけの案内・・・
電話番号を見て「これは行ってみたい!」と思う人なんているでしょうか?
いるのなら相当な変態です。
パンフレットを作るだけでは意味が無く、魅力的なパンフレットが必要です。
でもパンフレットを作っている人すら「魅力を伝える」とうのがどういうことか分からない素人です。
結果、料理写真を載せてはみたものの、ストロボポン焚き(内蔵ストロボで撮影したライティングしていない写真)の汚い料理写真や、閑散としたイベント会場の写真を載せ
て「人気の無いイベントですね」と思われたり、お客様減らしたいのかと思ってしまうほど酷いものが次々と出てきます。

「活性化だ」と始まる人の多くは、イベントをやることに躍起になるものの、どうすれば多くの人に知ってもらうかはまるで考えていないか、考えてはいても上記のようなミ
ッションクリティカルではない、すぐに行き詰る思い付きの連発です。
本来、イベントを行うのならどういったイベントにするのかや、そのイベントをきちんと運営することは勿論大切ではありますが、平行して重要なことはどうやって多くの人
に知ってもらうのか、どのようにしてPRをするのかです。
具体的には、パンフレットやホームページを作るのならデザイナーやディレクター、写真を載せるのならカメラマン、イラストを載せるのならイラストレーター、コピーを作るコピーライター、文章を書くライターなどが必要です。
実際、これらプロに発注することは費用がかかりますから、なかなか頭では分かっても、現実難しいことも確かにあります。
でも、少なくてもこういったことが必用だということが分かっている人が一人何役もで必要な要件をクリアさせないと滅茶苦茶な状況になってしまうわけです。
しかし、こういった活性化はイベントをやることに躍起になってしまい、どうやってPRするのかは全く考えていません。
それで簡単に載せられるという付け焼刃な理由でFacebookやブログに何も考えずに掲載します。
そうすると先に記載したような問題が起きてしまいますが、PRのことやお客様目線のサービスなど何も考えていないため、こういった問題が生じることにすら気づきません。
パンフレットやwebを作ってはみたものの、それが酷いものだということにすら誰も気づきません。
先の自動車の販売の例を出すなら、企画担当が躍起にやって凄い車を企画したものの、販売の準備は何もしていない、広報は何もしていない、パンフレットもあきれるようなしょぼいデザインにスマホで撮った汚い写真、生産管理もまるで出来ていない、ラインは作ったけど作業員は募集していなかった、いざ作業員かき集めたけど、部材の手配をしていなかった、製品完成したけど物流の手配していなかったとか滅茶苦茶な状態になります。
そりゃー売れるわけがありません・・・と、言うかその前に製品が完成しません。
でもこんなことが日常茶飯事起きているのが多くの活性化運動です。

【まやかしの成功体験】
ですが、この手のイベントは意外と成功"しているよう見えます"。
その理由が地方パワーです。
地方というのは意外と人と人と繋がりがあるため、声をかけると案外イベントに来てくれます。
そうすると一見すると大勢人がいるように見え、成功しているかに見えます。
しかし、ふたを開ければ内輪の知り合いばかり。
これでは活性化イベントではなく、ただの内輪の飲み会です。
それでも、一見盛り上がっている風に見せるPRとしてあえてやるという手もありますが、それなら「こんなに盛り上がっていますよ」という事後PRも必要ですが、そもそ
もホームページもありません。
ホームページがあってもどうやってきてもらうか考えていません。
マスコミを多数呼んで、「こんなに盛り上がっていますよ!」とアピールにやるというのもありですが、どうすればマスコミが来てくれるのか、何も考えていません。
結局、一見人は来ている様に見えても外部には何のPRになっておらず。PRをするということも考えていません。
それで「大勢来てくれたー」と思っても、外部へのPRになっていなければ、やはりただのマスターベーションです。

【東京ディズニーランドのサービスが高いわけ】
東京ディズニーランドが、ものすごい高いサービスレベルだとはよく言われます。
その理由の一つが、「お客様心理の先読み」です。
お城の前で記念撮影を皆さんします。
家族で撮影をしようにも、三脚が無いのでお父さんがカメラを持って撮影しますが、このときの家族の心理は何でしょうか?
出来れば全員で写りたいのではないでしょうか?
そこで東京ディズニーランドでは、シャッター押しのキャストが何名も配置されています。
そして、ただ配置されているだけではなく、撮影をしようという方がいれば積極的に「シャッター押しましょうか」と声をかけます。
こういったシーンはあらゆるところであり、お客様の心理を先読みして先行してサービスを提供するわけです。
こういった痒いところに手が届くサービスを徹底しているからこそ、「サービスが良い」と言われるわけです。
一方の活性化運動はどうでしょうか?
「ようこそ○○へ!」なんて横断幕を掲げたり、電車降りて来た方に手を振って「おもてなし」とかそういうイベントをやるものの、駅を出たお客様はどこからバスに乗って
いいのか、どのバス乗っていいのか分からず右往左往。
そんな光景が毎日繰り広げられているのに、誰も「バスをお探しですか」と声もかけず、自分たちは手を振ってもってもてなしたと大満足。
これをマスターベーションと呼ばずになんと呼ぶのでしょうか?
報道にしてもそうです。
新聞社から取材を受けたということは、先読みすればそれは(確実にではないにしろ)新聞に出るということです。
新聞に出るということは、いろいろな人が見るということです。
では見て興味を持ってくれた人は何をするのでしょうか?
いまどき多くの人はネットで検索します。
ではそれを先読みするのなら・・・しっかり魅力的なホームページを作って、SEO対策もしておくべきです。
しかしマスターベーションになっている活性化運動は、そういったことを丸で考えていません。
つまりお客様心理の先読みが全く出来ていないわけです。

【医学の知識が無いのに手術をしている】
何故こんな異常事態になってしまい、しかも異常事態になっていることに気づかないのでしょうか?
私がよく使うたとえ話で「最愛の人が病気になったらどうしますか?」というのがあります。
いうまでも無く、皆さん病院に連れて行きます。
それは「医者」という専門家に後の対応は任せるということです。
医学の知識がなければ治療も手術も出来ません。
そんなこと誰にでも分かります。
にもかかわらず、ローカル線の活性化はまるで家で手術するようなことが始まります。
医学の知識は勿論のこと、消毒の知識も麻酔の知識も無いにもかかわらず、突然台所から包丁を持ってきて腹を切り裂くようなクレイジーなことが始まります。
例えば、マスコミから取材を受けたのなら、後日報道されるわけです。
では、報道を見た人は何をするでしょうか?
先に記載したようにいまどきはネットで検索してより詳細な情報を調べようとする人が多数います。
ならば、事前にホームページで情報を掲載しておき、SEO対策も完了しておく必要があります。
しかしそんな事を丸でしておらず、取材が来たらただワクワクして「新聞出たー!」と大喜び。
一方記事を見た人は検索してもどこに情報があるのかさっぱりわからず、かろうじて誰かがポスターを撮影した画像が出てきたものの、文字がつぶれて詳細は見えず、FaceBookがあったと思えばいきなり「お前の個人情報教えろ」と表示される有様。
まさに、麻酔や消毒という事前準備もしないままいきなり包丁で腹を切り裂くようなクレイジーな行為です。
当然助かるものも助からなくなります。

そもそもマスコミ報道の使い方が間違っています。
マスコミは黙っていても情報をかぎつけて取材に来ると思い込んでいるような人は活性化を出来ません。
例えばメイドトレインの報道である事に気づきません?
それは開催前なのに、既に参加メンバーが電車の前に並んだ写真がマスコミに掲載されているということです。
これは事前にマスコミ配布用の写真を撮影し、準備しているからです。
同時にホームページも準備しておき、これらの準備が整ってから、マスコミにリリースをかけます。
その準備が出来るまでは、極秘に計画を進めます。
メイドに対しても「絶対に事前に情報を出すな」というのを徹底します。
(戦略的に匂わせることはありますが)
画像があれば掲載確立はあがりますし、掲載されてもインパクトは絶大です。
とすれば、大勢の方が検索してホームページにやってきます。
ホームページで詳細情報を掲載しておけば的確に伝わります。
つまり、マスコミ報道の前にはこういった準備が必要です。
それをせず、報道させるなど、麻酔も消毒もしないで腹を切り裂いてしまったような物です。
しかし、医学の知識が無い人は麻酔や消毒の重要性など全くわからないため、何が起きているのかすらも分からないで次々にいろいろなことを始めてしまいます。
当然助かるものも助からなくなる方向に向かいますが、それすら気づきません。
実にクレイジーな状況が起きます。

【消費者が物を買う法則】
活性化運動できよく起きるのが手段の目的化現象です。
たまに「メイドトレインは活性化にならない」という方がいますが、それはメイドトレインを運行しても乗客が激増するわけではないと言う発想だからでしょう。
そういった方は、要するプロモーションの基本を全く知らない方です。
例えば、先に出したソフトバンクやBOSSのCMを見ただけで、その商品を買いに行こうなんて思う人はいません。
そんな購買に繋がらないことに、企業は数十億、数百億と使うのはなぜかです。
消費者の購買心理を体系化した法則に「AIDMAの法則」というのがあります。
詳しいことはネットに多数情報があるので見ていただくとして、「物を買う」にあたり、消費者の心理は次のように推移するというものです。
1.Attention(注意)
2.Interest(関心)
3.Desire(欲求)
4.Memory(記憶)
5.Action(行動)
つまり、物を買ってもらう、鉄道なら乗ってもらうには先ずは注意関心を集めないと始まらないということです。
その注意関心を集めるために、企業はわけの分からないCMに莫大な費用を投じているわけです。
それは注意関心を集めることが、PRの第一歩だからです。
ですが、活性化運動をする人たちはそういったことが丸で分からない素人の方々です。
そういった方が活性化運動すると、まず、5.Action(行動)をいきなり起こそうとします。
結果、PRすることを丸で考えていない、どうすれば話題になるのか全く考えていないという現象が起きるのです。
メイドトレインは上記1~4までのミッションです。
結果、ホームページに1時間当たり1万アクセスとか膨大数な関心を集めてくれる人を呼び込めます。
その人たちをどうやって顧客にするのか、具体的にはその鉄道のことや、沿線観光案内、グルメ案内などのPRに結びつける事はメイドトレインの契約範囲ではありません。
それは後は鉄道会社や活性化団体の仕事です。
その契約外の5.Action(行動)が起きない、活性化にならないと言うのは困った話です。
多くの関心を集めホームページに多数の人がやってくる仕組みを作ったのに、それをどう集客に結びつけるのか何も準備せず「お前じゃ活性化にならない」と言う所とは、お
付き合いしたくありません。
こちらは良質の鍋と包丁を準備するという契約を行い、契約どおりいまだかつて無い鍋と包丁を準備しました。
それで料理が出てこないと言われるのは、言いがかりです。

【違法行為も多数勃発】
医者じゃない人が手術をすれば、当然医師法違反ですし、それで殺してしまえば殺人罪に問われることもあります。
それは極端な例えとしても、活性化運動でも様々な犯罪行為が起きます。
一生懸命やった結果が犯罪行為、違法行為、不法行為では報われません。
今年5月、秋田内陸縦貫鉄道が「鉄道甲子園」というイベントを開催すると発表しました。
しかし・・・
この名称、阪神電鉄系の広告代理店「阪神コンテンツリンク」が大阪で開催している鉄道イベントの名称で、商標登録されています。
つまり、秋田内陸縦貫鉄道は他社の商標侵害をしてしまったというわけです。
阪神コンテンツリンクは秋田内陸縦貫鉄道に商標の使用差し止めを求める事態に発展します。
何故こんな事件がおきたのでしょうか?
要するに、医学の知識も無いのに手術した結果です。
つまり、イベント開催をするのなら事前に商標を調べるのは勿論、商標以外でもネットで検索したら何が出てくるのか、他と競合していないのかなどリサーチする必用があり
ます。
そういった基本動作を全くしなかった結果です。
ですが、こういった事件を起こしているのは秋田内陸縦貫鉄道に限りません。
例えば飲食物を提供するのなら、食品衛生法並びに食品衛生法施行条例に基づく開業手続きが必要です。
たった一日のイベントであっても、飲食店としての開業許可を取らないと違法な無許可飲食店です。
白タク(白ナンバーの自家用車でタクシー営業すること)と同じような違法行為です。
BGMを流すのならJASRACへの申請と、楽曲使用料金も納めないとなりません。
そうしないと著作権法違反です。
ヘッドマークをつけるにも屋外広告条例の検討も必要です。
小田急電鉄のドラえもん電車について東京都から屋外広告条例違反の指摘を受けたのは記憶に新しいところです。
もちろん、程度問題はあります。
例えば子供が両親の肩たたきをして、お小遣いをもらう行為を厳密に言うと、無資格マッサージとなり「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」に違反
します。
だからといっても子供を処罰することが社会正義でしょうか?
これを法律用語で「可罰的違法性」と言います。
条文上違反行為だからと直ちにけしからんというのもナンセンスです。
ですが、事業として行ううえで、こういった本来やるべきことを何もやらずに次々と行動を起こすのは危険です。

【学ばない活性化運動】
活性化運動をする人にもう一つ特徴があることが分かりました。
それは不思議なほど学ばないということです。
広告やプロモーション業界で何年もやっていた人がボランティアで活性化運動をするというのなら、今更学べとは言いません。
しかし、活性化運動をする人たちの殆どは広告やプロモーションの素人のはず。
でも何とかしたいと思うのなら、学ぶ必用があるのではないでしょうか?
例えば沿線紹介のパンフレットやwebを作るというのなら、他の鉄道会社がどういったパンフレットを作っているの、パンフレットを多数取り寄せて研究すべきです。
そうすれば「最低限これくらいのものを作らないとなー」というのが分かります。
また、イベントをやるというのなら他社のイベントを見学に行ってもいいのではないでしょうか。
そうすれば、どういう内容のイベントを、どうやって運営したり、どうやってPRや集客しているのかが見えてきます。
ですが活性化運動をしている人たちの多くは、そもそも知識も無ければ、こういった研究もしないため、あまりに独りよがりのものになってしまいます。
結果、あまりにもトレンドから外れたこれは酷いというもの、内容が無いものが次々と出てきます。
トレンドやブームともかけ離れたものばかりで、全く話題にもなりません。
また、こういった活性化運動をしている人たちは自分たちと同じレベルの人たちとはコミュニケーションを取ろうとする物の、自分たち以上の人たちとは交流をあまりしませ
ん。
例えば、和歌山電鉄やえちぜん鉄道に行って話を聞いてきたという人たちがどれだけいるでしょうか?
活性化したいと思うのなら、成功したところから話を聞くべきではないでしょうか?
つまり、どれもこれも独りよがりのまさにマスターベーションです。

【活性化運動は諸刃の剣】
ローカル線の活性化で、沿線住民の方が「なんとかしよう!」と立ち上がることが活性化の第一歩です。
しかし、これが時として諸刃の剣となります。
例えば私が鉄道会社とメイドトレインを運行するに当たっては、両者社長名で契約書を交わして、契約が履行できない場合は賠償するという規定まで盛り込まれます。
ですが活性化運動は、出来る物をみんなで持ち寄るという方向ですが、これが曲者です。
つまり、活性化運動には履行責任が無いのです。
結果、本来やるべきことをやらなくても、誰も責任が問われません。
そうすると何が起きるでしょうか?
好きなことを好きなペースで始まります。
本来、年間数千万円から数億円の赤字を抱えている路線を再生しようというのなら、明確な目的とミッションが必要です。
しかし、それが活性化運動にはありません。
そういったそもそもの目的意識が問題のため、どうやって多くの人に知ってもらうかという根幹すら誰も考えていないという状況が生じるわけです。
更に言うと、活性化だと集まってくる人の中には、活性化をしたいのではなく、活性化の名を借りて自分たちの趣味をやりたい人たちがいます。
「自分たちの出来ることをする」と「自分たちのやりたいことをする」は似て非なるものです。
後者が侵食をして大腕を降り始めた活性化運動は、もはや再起が困難です。

【活性化で必用なのは?】
以前、ツィッターでこのような質問を受けて私は「活性化で必用なのはプロデューサー」と答えました。
同じ事を元銚子電鉄鉄道次長で銚子市観光プロデューサー 向後功作氏も「活性化で成功したところには大抵プロデューサーがいる」と言われています。
意外かもしれませんが、たま駅長で有名な和歌山電鉄も、南海電鉄貴志川線時代にはプロデューサーが不在で、色々な市民運動が立ち上がるものの活性化できない状態が何年
も続いていました。
そこに和歌山大学学長や地元経済界が組織した「和歌山市民アクティブネットワーク」が合流し、活性化団体を再選し運動を進めた結果、今の和歌山電鉄が出来上がったので
す。
こういった全体を統括する人がいない活性化運動は何が起きるでしょうか?
次々と色々な市民運動やファン組織が乱立をし始め、その各団体が何も考えずに次々とホームページやツィッター、FaceBookを始めます。
そうすると、ネット上はどれがメインの情報かも分からず、検索すると様々な情報が出てきて混乱します。
さらに、時代錯誤なキャラクターが登場したり、勝手な作られたロゴが次々と出来たり、挙句は鉄道会社の名称でアカウントやドメインをとり始めて応援ページを作る人が出
てきたり、イベントするにも複数の団体が同じタイミングで同じイベントを始めて、情報展開が混乱したりetc
収拾が付かないほど滅茶苦茶な状況になります。
これ、実際ある活性化運動でいま起きている状態です。

本来はこういった皆さんのパワーを適材適所に配置し、全体の流れを作るプロデューサーが必要です。
そして各ミッションごとにディレクターが必要です。
本来はこういった皆さんのパワーを適材適所に配置し、全体の流れを作るプロデューサーが必要です。
そして各ミッションごとにディレクターが必要です。
そういったミッションとして完成しておらず、方々が好き勝手に活動してしまう活性化運動は、残念ながら成功しません。

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