まず、私は広告業界と“直接的な”縁のない人間で、こうした書評というものを書くのは初めてなので、稚拙な文章であることはご容赦してくださると幸いです。しかし、これまでの同書に対する他の方の書評ツイートに対し、高広氏がリプライしているのを見ると、私の書評にも何らかのアドバイスをしてくださるのではという淡い期待を抱いています。


前置きが長くなりましたが、書評させていただきます。

本書の『はじめに』に、
「本書はどの章から(“も”が抜けている?)読まれていいような構成になっている」
とあるが、私のように「“プロダクトアウト”って何それ?」とググらないといけないレベルの人間は最初から読むことを推奨する。もっとも、高広氏のtwitterのフォロワーではマイノリティかと思うが。
1~4章は広告業界を詳しく知らない私にとって、業界本のような感覚であった。しかし、その内容は広告業界をだらだらと箇条書きしたものとは異なり、高広氏がこれまで広告業界とどう向き合ってきたのかが分かる内容であった。それが今の高広氏の仕事についても深く言及している5章につながっていく内容となっている。

こう述べると、1~4章を軽く見ているように感じられるので、1~4章で特に印象に残った3つの言葉について言及する。

まず、1章の『オーダー』と『オファー』である。簡単に言い換えると、オーダーは『決まった仕事』であり、オファーは『決まっていない仕事』である。この言葉を見て、私は即座に技術系の大学院研究室や研究所の『Technician』と『Researcher』を連想した。Technicianとは、研究に用いる技術や機械操作を熟知した者であり、一般的なイメージだと『職人』のようなものである。研究資金の潤沢な研究室には彼らがいて、時に“芸術性”を必要とされる結果を出すためにも必要とされる。
これに対し、『Researcher』は文字通り研究者であり、仮説を立ててその検証を行うことで自らの発見を世界に知らしめることが仕事である。世界に知らしめなければいけないので、どこかの政治家がおっしゃったことではないが、世界で二番目では全く意味を持たない。彼らは仮説を実証する際に、早く綺麗な結果を出すためにTechnicianに仕事を依頼することがある。その際に、『決まった仕事』として『Recipe』を渡すのだ。こうして自分の関わる分野に置き換えることができる言葉があると面白い。

次に、2章で『メディアプランナーのメディアリストの限界』という言葉を使う際に、
「本当にそれだけ?だから君達には限界が見えてしまうんだよ。なぜ制限のあるものから考えようとするの?」
と言っている高広氏の姿が想像できた。高広氏は博報堂、電通、Googleを経て独立しているが、
「会社をやめる際に、その会社で残念に思うことを書き連ねてきた。」
と仰っている。博報堂か電通を辞める際には上記のようなことを述べて辞めたのではないかと想像する。電通を辞める際には既に『sukedachi.jp』のドメインを取得していたらしい。

最後に、同じく2章について。Owned Mediaは例があって分かりやすかったが、Earned MediaとPaid Mediaについてはよく分からなかった。
これについては、まだ本書を読んでいる途中にtwitter上で @nagaoka_h 氏が書評を述べていて、その内容に最初はとても共感して思わずリプライしてしまった。高広氏は @nagaoka_h 氏のツイートの「良く分からなかった所」が引っかかったのか、「どこがわからなかったですか?」とリプライしていた。その後のやり取りは拝読していないので、 @nagaoka_h 氏がどう考えてツイートしたのかは不明であるが、私はこのやり取りを見ていなかったら、何が分からないのかも分からないまま、「良く分からないところがあった」と書評していたのかもしれないと自らを恥じた。
そして、『Earned MediaとPaid Media』がよく分からないという一つの結論を導き出したのだが、その直後に、「共著として出版した『フェイスブックインパクト』にその背景が書いてある」とあるのではないか!とまた自らを恥じることになった。
こうした点は、学術論文を読む際の“Reference”と同じである。まさにペダンティック!
「自分では分からないことって何だろう?」
ということを考えるよいきっかけとなった。
とは言え、一冊読んだだけで著者の考えていること全てが分かるとは思っていない。それに、ペダンティックである以上に一つ一つの言葉が広告業界とは縁のない私にとって重くのしかかってきたことは事実である。これは、『はじめに』で高広氏が述べている「難しい話を語る人が減った」ことから「バズワードに釣られてしまう」という危惧につながるのではないかと思う。こうした現実を「考えるきっかけ」になったので、
「高広さん、あなたの目論見は大成功ですよ!」
と伝えておきましょう。

こうして書評を書いていると、私は2章が頭に残ったのでは?とも考えてしまうが、私自身は印象に残った『言葉』がたまたま2章にあったわけで、2章全体がもっとも印象に残っているのではない(と信じている)。
そもそも印象に残る考え方は、
A.自らにない考え方
B.共感する考え方
C.自らと対立する考え方
の三つではないかと思う。A.が一番目と三番目でB.が二番目で触れたことである。


 そして、もっとも注目すべきはやはり、5章である。本書を購入する前から、twitterで高広氏のツイートを見ていると、度々「コンテクスト」という言葉が登場するので、これは絶対キーワードだろうと睨んでいた予想が当たって、とても嬉しかった。
 あまり言うとただのネタバレになってしまうことと、自分自身まだよく分かっていないため、5章を重点的に読み返そうと思っている。つまり、先に挙げたA.を理由に5章が印象に残っているのだ。
 それを理解し、現在では広告業界に縁がない私でも、いつか何かしらの縁で高広氏とお会いできる日が来ればいいなと思いつつ、自らの「レベル上げ」に奮闘していきたい所存である。

全体を通して、貴社の堀昌之氏( @masayuki_hori )が仰るように、上司である高広氏は①常識を疑う②自由な発言をする③細かいところにもこだわる方であることが分かったことも大きな収穫だといえよう。お陰で、twitter上で某I氏や大学不要論者を批判することに対する理解度が大きく向上した。なぜならそれらは全て、高広氏の“実体験”に基づいているのだから。



それと、本書のデザインについても話すと、デザイナーが喜ぶとのことで言及しますね。

いざ自分の周りを見渡してみても、白を基調とした本が多く、銀色の背表紙と共に異彩を放つ本である。私はオシャレな洋服を買うのが好きで、特に黒系統のものをよく買う(偏りすぎているので、バラエティを持たせる為に最近は避ける傾向にあるが)ので、私のファッションにもマッチするオシャレなデザインである。本書でツヴァイの広告に触れた際にも、広告を敢えてシンプルにしたとのことなので、その影響がデザインにも現れたのでは?と勝手に思っている。

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