『日米首脳会談の首相発言 事前に要領交換か』|日本農業新聞29日

 民主党が24日に環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加問題をテーマに開いた両院議員懇談会。一般紙の報道では「紛糾しなかった」とされたが、実際には日米首脳会談の前に「全ての物品とサービスを交渉のテーブルに乗せる」とする野田佳彦首相の発言要領の文書を「交換」していたとする山口壮外務副大臣の発言をめぐり紛糾した。日本がTPP交渉で大幅に譲歩すると、米国政府に誤解されかねない首相発言を日本側から通告していたことが明らかになり、政府の交渉姿勢に不信感が広がっている。

 発端は、18日夜のNHK討論番組での山口副大臣の発言。日米首脳会談での野田首相の「全ての物品」発言をめぐり、両国政府の発表が食い違ったことについて、「事前にトーキングポインツ(発言要領)みたいなものを交換して、その時には『そういうものも(野田首相が)言うかもしれないかなあ』なんてこともあったが、野田首相は(事前に米国側に通告した通りに)言わなかった。ホワイトハウスは、後でどういう話があったのかをチェックせずに、そのままいっちゃった」と説明した。

 24日の両院議員懇談会では「トーキングポインツ」を誰が作成したかなどに質問が集中。だが、野田首相、玄葉光一郎外相、枝野幸男経済産業相から「明確な答弁はなかった」(TPPを慎重に考える会の山田正彦会長)。

 外務省は「会談の前に手の内を明かすような文書を交換することはあり得ない」(北米局北米第二課)としつつも、日米両政府の事務レベルで事前に、経済連携について調整したことは認めた。対米関係を重視する同省が、米国を誤解させる発言をあえて野田首相にさせ、日本のTPP参加に対して米国内の期待を高めようとした可能性もある。

 TPP交渉参加をめぐってはこの他にも、野田首相がTPP交渉への対応を決めた11日以前に、経産省が「交渉参加を決断した」などと明記した日米協議用の資料を作成していたことが明らかになるなど、政府の前のめりな姿勢が露呈している。

 同懇談会でこの問題をただした舟山康江元農水政務官は「結果的に間違ったメッセージを伝えた責任を明確にすべきだ。強い姿勢を示さないと相手国のペースにのまれてしまう」と危機感を示した。

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